失禁関連皮膚炎(IAD)対策
IAD(失禁関連皮膚炎)とは?
IAD(Incontinence Associated Dermatitis: 失禁関連皮膚炎)とは、「尿または便(あるいは両方)が皮膚に接触することにより生じる皮膚炎である」と定義されています。IADは疾患を示す用語ではありません。この場合の皮膚炎とは、皮膚の局所に炎症が存在することを示す広義の概念であり、その中にいわゆる狭義の湿疹・皮膚炎群(おむつ皮膚炎)やアレルギー性接触皮膚炎、物理化学的皮膚障害、皮膚表在性真菌感染症を包括します。
IADの発生メカニズム
IADは、失禁のある患者で、尿や便が皮膚に直接触れ続けていることで皮膚が浸軟したところに、摩擦やずれ、化学的刺激、あるいは感染が加わって発生します。
失禁のある患者のアセスメント
IADの予防と発生時の対応を考える上で、局所部位について「皮膚の状態」と「付着する排泄物のタイプ」を評価します。
IAD-set(IAD重症度判定スケール)
日本創傷・オストミー・失禁管理学会では、「IAD-set」というツールを用いてアセスメントすることを奨めています。8つの局所部位について「皮膚の状態」と「付着する排泄物のタイプ」を評価し記録します。
・皮膚の状態:皮膚障害の程度とカンジダ症の疑いを評価
・付着する排泄物のタイプ:便と尿を評価
・評価する部位:下記の計8部位
1. 肛門周囲
2. 臀裂部
3. 左臀部
4. 右臀部
5. 性器部(陰唇/陰嚢・陰茎)
6. 下腹部/恥骨部
7. 左鼠径部
8. 右鼠径部
出典:「IADベストプラクティス」一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会(2019)
ブリストル便性状スケール
便の硬さの見解を統一するためにも「ブリストル便性状スケール」を用いることが推奨されています。
IAD(失禁関連皮膚炎)対策
IADにおける標準的スキンケア
IADの予防・管理の基本は、皮膚に付着した排泄物を除去し、皮膚を清潔に保つための「清拭・洗浄」と、排泄物による皮膚生理機能への影響を正常化するための「保湿」です。
「紅斑」、「びらん」、「潰瘍」、「感染の疑い」がある場合は、診断・治療は主治医や皮膚科医に、ケアはET/WOCナースに相談し、コンサルテーションを受けましょう。
「軟便」「水様便」「尿感染の疑い」がある場合には、標準的スキンケアにくわえて「保護」を追加し、排泄物の付着を防ぎましょう。
・清拭:皮膚に付着した排泄物(便・尿)をふき取ること
・洗浄:皮膚に付着した排泄物(便・尿)や垢などの汚れを洗い流すこと
・保湿:皮膚表面を覆い水分蒸散を防ぐこと(エモリエント)、または、水と結合し角質層に水分を与えること(ヒューメクタント)で皮膚の水分を保持すること
・保護:皮膚表面に塗布し保護膜を形成し、排泄物(便・尿)の付着を防ぐこと
出典:「IADベストプラクティス」一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会(2019)
IADにおける原因と対策
原因1:排泄物との接触
消化酵素を多く含む液状の便(水様便・泥状便)は、皮膚に触れると刺激になります。
対策1:ふれさせない
撥水効果のある保護クリームや被膜剤を塗布して刺激物が直接皮膚に触れないようにします。
原因2:皮膚の浸軟(ふやけ)
排泄物の水分や湿気で、皮膚がふやけることで、皮膚のバリア機能が低下します。また、おむつやふき取りによる摩擦が刺激になり、皮膚損傷を起こしやすくなります。
対策2:ふやけさせない
皮膚を密閉せず、水分蒸散を妨げない製品で対策をとります。
院内での勉強会にてお使いいただける資料
「IAD(失禁関連皮膚炎)について」勉強会資料
IAD(失禁関連皮膚炎)の発生メカニズムと失禁患者への対応、特に「皮膚の保護」について解説している勉強会資料です。
勉強会資料の内容:
<IAD(失禁関連皮膚炎)について>
・IADとは
・IADの発生メカニズム
・IAD対策-皮膚の保護
(再生時間:約8分)
※ 動画の一部をご覧いただけます。
ケースレポート
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※先生方のご所属・肩書きは取材当時のものです。
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